京列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

平城京から平安京。
遷都の物語に、幻の都があったと言う。
教科書にも載らない都の名前―長岡京―。
そんな幻の都があったここ京都府長岡京市から、京を切り取る今日のいろ。

列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

歴史があるまち京都。
平等なときの流れ。
その平等、色を使って少し操作をしてみましょう。
色にはそれぞれ、「薄い色は軽い」「濃い色は重い」など、見るだけで違うイメージができます。
さらに、「明るい色は暖かく柔らかで軽く」「暗い色は涼しげで硬く重い」。
これは、太陽の光が緑の葉に当たったとき、光が当たっているところは黄色っぽく明るい緑色に見え、光があたっていない影の葉の部分は暗い緑色に見える『ナチュラルハーモニー』と呼ばれる色の現象で、自然下で常に起こっています。
いつもわたしたちが目にしていて、とても素直に受け入れているイメージなのです。
この現象に従って、「速い」「遅い」イメージを乗り物で感じてみましょう。

列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

太陽の光に当たった部分の色、これは暖かさを感じる色。
例えば赤や黄色。
京都には嵯峨野観光鉄道、いわゆる嵯峨野トロッコ列車が運行しています。
トロッコ嵯峨駅(JR西日本山陰本線嵯峨嵐山駅)とトロッコ亀岡駅(JR西日本山陰本線馬堀駅近く)、7.3kmを約25分で結ぶ観光列車です。
保津川渓谷を走るトロッコ列車。
春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色。
自然の中を行く乗り物、嵯峨野観光トロッコ列車。
太陽を感じさせる赤と黄色は自然の風景に溶け込んで、少し速めの自転車ほどのスピードでゆったりゆったり走ります。
暖かみを感じる太陽のとろんとした色は、ゆったりとした時間が似合う。
トロッコのカラーリングを新幹線のような太陽の光の影を感じるような涼しげな白と青にすると、自然の風景からたちまち浮いてしまいます。
「自然」の対義語は「人工」。
なので、涼しげな色は人工的に感じます。
自然の風景の中では、自然に溶け込む、時間を忘れさせるゆっくりとした色の乗り物がよく似合うのです。

京列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

硬くて重いイメージから連想する色のひとつに黒があります。
黒い列車で思い浮かぶといったらなんと言っても蒸気機関車。
京都には動態保管されている蒸気機関車に出会えます。
梅小路公園の梅小路蒸気機関車館には蒸気機関車が展示され、乗車することもできます。
冷たく重量感がある黒い蒸気機関車。
蒸気機関車展示館の扇形車庫にはいくつもの蒸気機関車が展示されています。
真っ黒な機関車に黄金のエンブレム。
お召し列車けん引き機関車仕様C58形1号機(実際にけん引きした車歴はなし)には、暗闇にさっと光が当たったように、エンブレムの鳳凰とヘッドマークの菊の御門が誇り高い。
銀色であったらこれほどは目立たないでしょう。
金が太陽の色ならば銀は月の色、暗闇が似合う。
月の銀色は、黒い蒸気機関車によく似合う。

京列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

太陽の光の影の色。
冷たい色は人工的で科学や産業で作り出された物。
硬く、重く、冷たさを感じる。
トロッコ列車ののんびり感からは感じられないスピード感。
この色の塗装がされている、スピードを感じる乗り物のひとつ、白と青の新幹線。

京列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

新幹線『のぞみ』は最高時速280㎞で京都―東京間を2時間と少しで結び、科学技術を詰め込んで走る冷たい色。
では蒸気機関車はどうでしょう。
C62形蒸気機関車特急『つばめ』は朝、東京を出発し京都に夕方到着したようです。
トロッコ列車よりは速くとも、現代の新幹線の速さには全くかなわず、これでは『速さを感じる黒なのに速度が遅い乗り物』となってしまいます。
それでも、日本の鉄道で、明治から大正、昭和と走ってきた蒸気機関車。
当時の最新技術のスピードで駆け抜けたことには違いありません。

京列車の色に見る風景に溶け込むスピード感や質感への考察

梅小路蒸気機関車館は、2015年8月30日にていったん閉館しました。
2016年春、京都鉄道博物館としてリニューアルオープンします。
新しい博物館では蒸気機関車だけでなく、電車、ディーゼルカー、新幹線を展示。
速さを感じる色、速さを感じない色、新旧取り混ぜた列車たちと一同に会えそうです。
明治時代に作られた鉄道唱歌、『東寺の塔を左にて 止れば七條ステーション 京都京都と呼びたつる 驛夫のこゑも勇ましや』の風景は今も変わらずとも、京都のまちの歴史がまたひとつ加わります。

 

杉原康子ライター:杉原康子
【資格など】ベースカラー診断士、パーソナルカラーアナリスト、CLEインストラクター、A・F・T 1級色彩コーディネーター、長岡京生涯学習人材登録講師、中国国家認定 中国茶芸師(プロフィールページへ