緑色の杉玉に込めた今年の新米への感謝の想い

平城京から平安京。
遷都の物語に、幻の都があったと言う。
教科書にも載らない都の名前―長岡京―。
そんな幻の都があったここ京都府長岡京市から、京を切り取る今日のいろ。

緑色の杉玉に込めた今年の新米への感謝の想い

冬が始まった京都の街。
京都市内から少し南に離れた歴史遺産型美観地区に指定されている伏見南浜界わいは、酒どころで有名。
良質な水が湧き出る『伏水(ふしみ)』とも呼ばれた伏見。
酒の蔵元の幹先に下がっている『杉玉』。
または『酒林』とも呼ばれる杉の枝でできた丸い玉を見たことがありますか。

杉玉は酒の蔵元で「新酒ができた」と知らせるためのもので、一年中軒先に下がっています。
そして冬は新酒の季節なので、蔵元の軒先では、新しく架け替えた杉玉に出会うことができます。
伏見の酒造会社の一つ、月桂冠
こちらの月桂冠大蔵記念館では、酒作りや酒の歴史についての資料が集まっています。

  • 緑色の杉玉に込めた今年の新米への感謝の想い

ここの杉玉について、スタッフの方にお話を伺いました。

「一ヶ月くらい前に架け替えたところです。
まだ、杉の葉に緑の杉が少し残ってるでしょう?」

杉の枝と葉先で丸く組んであるだけなので、時間がたつと茶色く枯れていきます。

「昔は杉玉をかけ替えるのは『新酒ができた』知らせで使っていました。
けれど今は、酒造場で一年中酒造りが行われているので一年中新酒がある。
だから『新酒ができた』と言うより、
『今年の新米を使った酒ができた』ときにかけ替えます。
杉玉の意味合いが変わってきましたね。」

たしかに、酒蔵だけではなく、お酒を飲めるお店の軒先にも、酒屋さんでも杉玉を見かけることがあります。

経済産業大臣が制定する近代化産業遺産にも指定されている月桂冠大蔵記念館は、建築物も伏見の街の色を作るうえで欠かせない建築物の一つ。

今年は大政奉還150周年。
土佐藩、会津藩、長州藩、薩摩藩などの主要な藩邸跡。
さらに鳥羽伏見の戦いなど、何かと幕末にも縁のある伏見。
その街の色は、京都市市街地景観整備条例で守られています。

杉玉は一年中見られますが、酒蔵の街並みの中に緑の杉玉が見られるのは、ほんの短い今だけです。

 

杉原康子ライター:杉原康子
【資格など】ベースカラー診断士、パーソナルカラーアナリスト、CLEインストラクター、A・F・T 1級色彩コーディネーター、長岡京生涯学習人材登録講師、中国国家認定 中国茶芸師(プロフィールページへ