京都の紅葉は特別の色、京のいろ

平城京から平安京。
遷都の物語に、幻の都があったと言う。
教科書にも載らない都の名前―長岡京―。
そんな幻の都があったここ京都府長岡京市から、京を切り取る今日のいろ。

 

木々が色づくことまで歴史上の出来事なんですね、この町では。

京都の紅葉は特別の色、京のいろ

これは1995年JR東海「そうだ 京都、行こう」キャンペーンの南禅寺のキャッチコピーです。
ただいま京都は秋真っ盛り、紅葉に彩られています。
「紅葉(こうよう)」とは木の葉が落葉する前に、葉の色が赤や黄色になる現象のことで、一般的に言われている「もみじ」は植物学では「カエデ」と言い、モミジもカエデも、カエデイロハモミジのように赤ちゃんの手のような葉っぱの木も本来は「カエデ」と言います。

 

燃えるような赤、黒い赤。

京都の紅葉は特別の色、京のいろ

そろそろ風が冷たくなる晩秋、赤や橙色、黄色のカエデの色は、見ているだけで暖かくなってくる「暖色」と呼ばれる色の仲間です。
太陽が出ている日中では、日が当たっている葉の部分は、更に目に温かさを感じさせてくれます。
暖色の仲間は、これから寒くなる季節にインテリアや身の回り、目に付くところに取り入れたい色でもあります。
葉は太陽の光に当たると、赤い葉は更に明るい赤に。
橙色は黄色が強くなり、黄色の葉は、自らが光を帯びているのかと見まごうかのごとく、輝いています。
また、まだ紅葉発展途上中の黄緑のカエデさえも太陽の光をさんさんと浴び、黄色みを帯びて輝いています。

京都の紅葉は特別の色、京のいろ

やがて日が傾き、少しばかり風が冷たくなる頃、日陰に入ったカエデたちの燃えるような色がどんどん物寂しげな色へ。
赤は黒みを帯び、橙色、黄色ですら太陽が当たっていたときとは全く違う、暗い色になっていきます。
もちろん葉その物が変色したわけではなく、日なたと日陰が作り出した色の変化です。
紅葉していく過程でも、緑の葉が黄緑になり、黄色から橙色、赤と変化する、この流れるように連続した自然の色の変化は、今でこそ科学的に解明されています。
色彩学上でも「見て心地よい色の変化」であることが理論付けられていますが、そんなことは知らない以前から、また、現代でも人は木々が紅葉するさまを愛で、和歌を詠み、美しいと感じてきたのです。

京都の紅葉は特別の色、京のいろ

 

特別な紅葉はどこに

美しいものを鑑賞したいのは現代人も同じ。
もみじ狩りを楽しむべく、たくさんの人たちが京都へやって来ます。
真正極楽寺・真如堂の方がおっしゃっていました。
「JR東海のキャンペーンを見て来られ方が『思ったよりも参拝者が多い』とがっかりされる」と。
誰もいない境内には色とりどりの紅葉だけ…、そんなイメージを持って来られるようです。
情報が手軽に入るようになった分、移動時間が短くなった分、失ってしまったものもあるでしょう。
千年以上も前から歌に詠まれて来た京のカエデたちは、そんな私たちをどんな風に感じているでしょう。
「京都の紅葉は特別の色だ」とよく聞きます。
『木々が色づくことまで歴史上の出来事』がそうさせる、千年の都、京都ならではなのでしょうか。
しかし以外と、自宅の庭の小さな木々の紅葉のほうが、自分にとっての大切な歴史上の出来事だったりするのかもしれません。

京都の紅葉は特別の色、京のいろ

京都市内は古代中国の都、洛陽にちなみ、東西南北をそれぞれ洛東、洛西、洛南、洛東と呼ばれます。
今回の写真は京都市の東側、洛東(らくとう)と呼ばれる京都市左京区エリアから。
歌舞伎の石川五右衛門のセリフ「絶景かな」で有名な三門がある「南禅寺」と、境内にあるレンガ造りのアーチ型の水路閣。
「秋はもみじの永観堂」と呼ばれる「禅林寺(永観堂)」から「哲学の道」を経て「真如堂(真正極楽寺)」までの紅葉たちでした。

 

杉原康子

ライター:杉原康子
【資格など】ベースカラー診断士、パーソナルカラーアナリスト、CLEインストラクター、A・F・T 1級色彩コーディネーター、長岡京生涯学習人材登録講師、中国国家認定 中国茶芸師

プロフィールページへ