両足院の半夏生

平城京から平安京。
遷都の物語に、幻の都があったと言う。
教科書にも載らない都の名前―長岡京―。
そんな幻の都があったここ京都府長岡京市から、京を切り取る今日のいろ。

  • 両足院の半夏生

梅雨の京都、雨降りの日。ここは建仁寺の塔頭のひとつである両足院

建仁寺の塔頭はいくつかありますが、両足院は通常は一般公開していません。
年に何度かの特別公開があります。
夏前の特別公開の「初夏の特別拝観」。
この公開中は、両足院の書院前庭である京都府指定名勝庭園の池泉廻遊式庭園で半夏生(はんげしょう)を見ることができます。
なので、両足院は「半夏生の寺」とも呼ばれます。

半夏生とは、毎年、半夏生の頃に白い花を咲かせる植物のこと。
緑色の葉の一部も白く変化するので「半化粧」とも呼ばれるそう。
夏至(6月22日ごろ)から11日目が半夏生(7月2日ごろ)で、この頃白い花が咲きます。
そしてこの時、緑色の葉も白くなるのです。
「半夏生はドクダミ科で、本来は山に生えている植物。普通はこのような庭に生えている植物ではありません。庭の苔を育てる庭師が丹精しています。」
とは、案内役の方の説明。

観世音菩薩はすべての生き物を救うために、その相手に応じて姿を三十三身に変化すると言われています。
「観音さまが変化(へんげ)するさまを汎下生(はんげしょう)と言います、この庭の植物も葉の色が変化しますので、半夏生(はんげしょう)と呼ばれるようになりました。」とお話されていました。

「最近は随分と葉が白くなりましたが、花が咲く前は緑色でした。でも花が終わる頃、また緑色に戻るんですよ。」

半夏生の白い花と白い葉。
「白」は氷や雪を連想させる色。
しかもこの白は、黄みも暖かみも感じさせないブルーベースの白。
ブルーベースは見ているだけで涼しさを感じる色です。

「先週から色づき始めました。今日は雨降りなので、半夏生の白がとても映えていますね。晴れているとなかなか白が映えないんですよ。」

これからやって来る夏の猛暑はまだ遠く。
今は雨降る中、庭の約800株の半夏生の白に、涼しさを感じるのです。