色取月の『揚輝荘』 ~市指定文化財~

『揚輝荘(ようきそう)』は、大正から昭和初期にかけて株式会社松坂屋の初代社長:伊藤次郎左衛門祐民によって構築された別荘です。
完成時の昭和14年頃は、約1万坪の広大な敷地の中に30数棟の建造物が建ち、迎賓館や社交場として国内外の交流の場となっていたそうです。
色取月(旧暦9月)のリリー通信は、南園と北園に分かれる月見の名所『揚輝荘』をご案内します。
 

赤茶色が印象的な【聴松閣/ちょうしょうかく】(南園)

色取月の『揚輝荘』 ~市指定文化財~

地上3階・地下1階からなる、西洋の建築様式を取り入れた外観が特徴の迎賓館。
昨年の修復工事以前は、クリームイエローだった壁が、本来の赤茶色に復元されました。

◎地下のご紹介

アジアの留学生寄宿舎としても利用された館内に、インドの画学生が描いた壁画が残されています。

アジアの留学生寄宿舎としても利用された館内に、インドの画学生が描いた壁画が残されています。

謎の地下トンネル

謎の地下トンネル。
見学はできませんが、冷気が漂って引きこまれそうになる感覚に「ゾクッ!」。
アイボリー×ベビーブルーの優しいストライプの壁模様と暗闇とのギャップがおもしろい空間。

◎1〜2階のご紹介

祐民が仏跡巡拝旅行で感銘をうけた、インド様式の装飾が随所に見られます。

祐民が仏跡巡拝旅行で感銘をうけた、インド様式の装飾が随所に見られます。

英国山荘風に装飾された、旧応接室。

英国山荘風に装飾された、旧応接室。
こげ茶の木材を中心に、ベージュ・海老茶・ココアブラウンなどの茶系のインテリアで品よくまとまっています。

珊瑚色が目をひく和室と、窓からの風景

珊瑚色が目をひく和室と、窓からの風景。

 

セピア色のサワラ材うろこ壁に心奪われる【伴華楼/ばんがろう】(北園)

セピア色のサワラ材うろこ壁に心奪われる【伴華楼/ばんがろう】(北園)

尾張徳川家から移築した座敷と茶室に、洋間を新築してドッキングさせ『Bungalow』をもじって命名。
遊戯室と応接室を設けた迎賓館に、昭和初期とは思えない、なんともお洒落なネーミング!
昭和50年くらいに、一部の方々の間で流行った“夜露死苦/よろしく”とは、訳が違います。
伴華楼の2階には、千年杉の張り合わせ欄間があり、洋間の暖炉には飛鳥時代の古代瓦が埋め込まれているそうです。
ぜひ、一般公開をして頂きたいものです。

 

若竹色に囲まれてリフレッシュ【北庭園/きたていえん】(北園)

若竹色に囲まれてリフレッシュ【北庭園/きたていえん】(北園)

京都の修学院離宮を模したといわれる、池泉回遊式庭園。
春の山桜、初夏の新緑、秋の紅葉と、四季折々の景色を楽しむことができます。
私が訪れた時は紅葉前でしたが、樹木の中で森林浴を満喫しました。
 
 

明度の異なるグレイに趣を感じる【白雲橋/はくうんきょう】(北園)

明度の異なるグレイに趣を感じる【白雲橋/はくうんきょう】(北園)

北庭園のシンボルで、祐民が描いたとされている龍の天井画は一見の価値あり。
2年前、龍の墨絵を逆さに見ると、女性の横顔が浮かび上がることが分かり「隠し絵だったのでは!?」と、話題になりました。
さて、逆さ龍の中に、冠をかぶった黒髪の美女を見つけることができるでしょうか?

今回は、市指定文化財でもある『揚輝荘』を、慣用色名で表現してみました。

慣用色名とは、「固有の意味をもち動物・鉱物・地名・植物の名前からつけられた色名で、一般的に広く使用されているもの」のこと。
<JIS慣用色名一覧>を見ると、色ごとに納得のいく色名がつけられていて、眺めていて飽きることがありません。
同じ場所でも、個人の感性や四季によって印象に残る色名は違ってくると思うので、色をテーマに感想を語り合うのも楽しいかもしれませんね。

10月19日(日)は、名古屋まつりに関連して『揚輝荘』が入館無料になりますよ!

※『揚輝荘
※『名古屋まつり

宇都小百合

ライター:宇都小百合
【資格など】ベースカラー診断士・パーソナルカラーアナリスト・NPO法人色彩生涯教育協会 認定講師、華道家元池坊いけ花教授免許、日本ほめる達人協会認定講師

プロフィールページへ