都をどり・花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)

平城京から平安京。
遷都の物語に、幻の都があったと言う。
教科書にも載らない都の名前―長岡京―。
そんな幻の都があったここ京都府長岡京市から、京を切り取る今日のいろ。

「都~をどりは~、よぉ~ぃや さぁ~」の掛け声、幕が開くのは、みやこに春を届ける「都をどり」。
京には「祇園甲部・宮川町・上七軒・先斗町・祇園東」と花街が五つあり、それぞれに一般のお客さんに舞を披露する舞踏公演と、その開演時間前に芸妓さんと舞妓さんが椅子に座ってお手前をする「立礼式(りゅうれいしき)」のお茶席体験ができます。

都をどり・花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)

都をどり・花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)

みやこが東京へ移ってしまい、京都の街を盛り上げるべく、明治5年から開催されている行事です。
旧仮名遣いをそのまま使用しているので、「おどり」ではなく「をどり」と書きます(宮川町のみ「京おどり」)。
五つの花街それぞれで「をどり」が開催されますが、その中で祇園神社にほど近い、京都最大の花街の祇園甲部歌舞練場で四月いっぱい行われるのは「都をどり」。

都をどり・花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)

今年2015年、第143回「都をどり」の主題は「花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)」。
今年は江戸初期に始まったとされる日本美術史の中でも重要な琳派がおこってから400年。
その琳派にちなんだ春夏秋冬、全八景を上演。
それぞれの場面をきらびやかに芸舞妓さんが舞います。
唄は、脇で三味線を弾く地方(じかた)さんの役目。
さまざまな衣装で舞は続いていきますが、幕開けに踊る「総をどり」を踊るときの衣装は全員が同じ衣装をまといます。
この衣装は毎年新調されますが、デザイン上、毎年決まっていることがあります。
肩と袖山には、京の春の象徴であり、八坂神社の氏子の証としての「しだれ桜」のデザインと、舞台の銀襖に映えるように着物の色が「青」だと言うこと(例外として昭和53年、58年、60年、62年、平成元年は緑)。
さらに琳派の年にちなんだ今年の着物のデザインは、琳派風の地紙の牡丹、梅、燕子花を流した「光琳水(みず)」と、四季草花の松、桜、紅葉、菊をちりばめたなんとも華やかなデザイン。

都をどり・花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)

「都をどり」で踊る京舞井上流は、江戸時代以来、公家の御殿で演じられたので銀襖の前で、第一景を踊るようです。
今年の総をどりの衣装の青はとても鮮やかで、冷たさよりも暖かみを感じる青。
鈍く光る銀色の襖の前で踊る第一景の「置唄(おきうた)」を踊る芸妓さん、舞妓さんたちを引き立たせます。
手描き友禅の衣装が暖かな青ならば、帯は赤を基調とした西陣織。
図案は、琳派で好んで使われる梅、第八景「平野社桜花絵巻(ひらのしゃさくらばなえまき)」の舞台、桜で有名な平野神社の桜と花菱紋。
赤と青は補色関係にあり、色同士がぶつかり合い、見た目にもしっくりしない配色のひとつです。
しかし、着物の面積に比べて帯の面積が小さいため、決して色同士がぶつかったりせず、見た目にも心地良く、華やかに、お互いの色を引き立たせます。

都をどり・花都琳派染模様(はなのみやこりんぱそめもよう)

昼間の祇園界隈を歩くと、普段の着物姿できりりと道行く芸舞妓さんを見かけることがありますが、きちんとした衣装で、しかも舞を見ることができる「をどり」。
彩りもきらびやかに、そして肩肘張らずに、みやこの美を堪能できます。
春の桜は過ぎましたが、京都の舞のいろには、晩春にも桜のような変わらぬ華やかさがあります。

都をどり公式ホームページ にて 第143回都をどり動画配信中
平成27年 京のおどり開催日
・都をどり(祇園甲部)4月1日~30日
・京おどり(宮川町)4月4日~19日
・北野をどり(上七軒)3月25日~4月7日
・鴨川をどり(先斗町)5月1日~24日
・祇園をどり(祇園東)11月1日~10日

杉原康子ライター:杉原康子
【資格など】ベースカラー診断士、パーソナルカラーアナリスト、CLEインストラクター、A・F・T 1級色彩コーディネーター、長岡京生涯学習人材登録講師、中国国家認定 中国茶芸師

プロフィールページへ